離婚前に知っておく調停のこと|期間・費用・流れ・欠席・取り下げ

円満な協議離婚が理想ですが、やはりそこには大きなハードルが待ち構えています。
慰謝料・養育費・財産分与・子供の親権など話し合いがまとまらない場合にはやはり第三者的な判断を仰がなければ決着がつきません。そこで家庭裁判所に『離婚調停』を申し立てて公平中立な立場から判断を仰ぐこととなります。
ただこの『離婚調停』を裁判と同じように考えている方も少なくありません。
もちろんこの『離婚調停」が不成立であれば裁判に発展することもありますが,多くは離婚調停で話し合いの決着がついています。しかもその費用や手続きは驚くほど安価・簡単なんですね。

離婚調停の期間は7割が半年以内(3回程度)で決着がついている

離婚調停の期間は7割が半年以内

離婚を切り出しても全然相手が応じてくれない!?
いつまで経っても決着がつかない?
そんなモヤモヤとした期間を数年も続けているご夫婦
業を煮やして家庭裁判所に離婚調停を申し立てたらあっさりとものの数カ月で決着がついた。
そんなことも決して珍しくないのが離婚調停の期間です。

調停手続き終了までの実施回数とその期間
(平成28年度司法統計年報家事編より)
全国の家庭裁判所に申し立てられた婚姻関係事件のうち、平成28年中に調停成立・不成立の結果の出た事件は以下の通りです。

婚姻関係事件
(うち離婚事件)
 66,400件
(43,484件)
調停が成立した事件
(うち離婚事件)
36,652件(55.1%)
23,880件(54.9%)
事件終了までの期間
(全事件)
6カ月以内   71.0%(調停成立事件69.4%)
1年以内    94.7%(調停成立事件94.3%)
調停審判(審判含む)の実施回数(全事件) 3回以内   63.2%(調停成立事件58.6%)
10回以内   98.6%(調停成立事件98.3%)

※婚姻関係事件には、離婚、夫婦円満調整、同居・協力扶助、婚姻費用の分担の他、夫婦をめぐる紛争すべての調停(審判)事件が含まれます。

離婚調停が「夫婦間では離婚の話し合いがつかない」方たちにとってスムーズな解決策であることはこんなデータからでもよくわかりますね。
損害賠償や借金返済などの裁判では判決まで1年以上かかるのが普通ですが、離婚など夫婦関係の調停は7割が半年以内に、ほとんどが1年以内に結論が出ているのですからいかに離婚調停がスピーディな解決策であるかがわかります。

■ 1回の調停は概ね2時間程度
調停では夫婦が別々に調停委員と話します。
それが3回程度で終了しているのが6割を超えていますから裁判と比べてずいぶん手間と時間も短縮できるのです。
離婚調停は家庭裁判所に申し立てますが、これは裁判ではありません。
夫婦が家庭裁判所の調停室で裁判官と調停委員(2人以上)と話し合うだけです。
もちろん夫婦別々にこの話し合いは行われます。
※それでも最初と最後だけはチラリと顔を合わせる事にはなりますが・・・。
裁判官と調停委員が双方の意見や主張を聞き、公平中立かつ現実的な妥協案(落とし所)を夫婦双方に提案することが多いからこれだけスピーディーに解決できているのかもしれません。

離婚調停の費用はわずか1200円

離婚調停の費用はわずか1200円
離婚の話し合いがまとまらずに「どうしても離婚したい」となれば相手の住所の管轄の家庭裁判所に離婚調停の申し立てをします。
この場合の離婚調停申し立て費用はわずか1200円です。
これ以外に連絡などの郵送費(約1000円程度)や戸籍謄本などがかかりますが併せてもわずか数千円です。

もちろん離婚調停で争そう内容や事情によりケースバイケースですが裁判と違い離婚調停では必ずしも弁護士など法律の専門家の力を借りずに当事者だけで行われることも珍しくありません。
裁判のように同じ法廷内で互いの主張や考えをぶつけあうのではなく、別々に調停室で淡々と裁判官と調停委員に今までの経緯や事情・証拠などを粛々と説明するだけです。
ですから今までの経緯や証拠を客観的に説明・立証できる証拠や資料があれば十分です。
※相手方が弁護士をつけてきた場合には対抗手段で考えなくてはいけないこともありますが・・・。
離婚調停の申し立て手続き自体もいたって簡素なものです。(後述)

離婚調停の流れはこうだ

離婚調停の流れ

まずは相手の住所を管轄する家庭裁判所に『離婚調停』の申立てを行います。
ただその前に気をつけて欲しいのは
ここでは今までの経緯や事情は自分で立証・説明しなけれならない!
ということです。
そのためには裁判官や調停委員に客観的にきちんとした証拠や資料を集めてからにしないといけないことはしっかりと認識しておいてくださいね。
証拠や資料を集める前に別居したり離婚調停の申し立てをしたりするとそれも困難になりますし、相手も証拠隠滅や財産隠しに走るものです。

①「夫婦関係調整調停申立書」を家庭裁判所に提出

「夫婦関係調整申立書」を入手し必要事項を記入して相手方の住所を管轄する家庭裁判所に提出します。
必要書類として戸籍謄本や収入印紙が必要になります。

申立て後、おおむね1カ月程度で夫婦それぞれに呼び出し状が家庭裁判所から届きます。

②以降、平日の日中に家庭裁判所の調停室で離婚調停が開催されていく

家庭裁判所もお役所ですから、この離婚調停は平日の日中に行われます。
1回の調停の開催時間はおおむね2時間程度と言われています。
夫婦別々に順番で調停室に入室し裁判官・調停委員と話し合います。
そこでは裁判ではないので非公開となりますので安心してください。
ただ弁護士は同席を許されています。
また弁護士は本人の代理人として単独で出席もできます。

③その後、数回の調停を開き決着をつけます。

調停は双方が原則双方が意するまで行われます。
ただ先におお話しした通り、
期間は半年から1年程度
調停の回数は3回から10回程度で決着がつくことが多いです。

◎夫婦双方合意が出来れば離婚調停成立

夫婦双方が合意できればその内容を「調停調書」に取りまとめて離婚届けと共に市区町村役場に提出して離婚は成立することとなります。
この調停調書には財産分与や養育費などの合意内容も記載されていてそれを相手側が守らない場合には様々な手段を講じて強制執行することができます。
このように「調整調書」には相手側からの支払いの確実性が期待できるのが「離婚調停」の大きなメリットとも言えます。
話し合い・口約束だけの協議離婚では後々金銭トラブルも少なくありません。

夫婦双方の合意が得られず、調停の審判内容にも不満があるのならば「裁判離婚」も考えなければいけません。
日本ではいきなり離婚裁判を起こすことはできなくてまず最初に離婚調停を行わなければいけないこととなっています。(調停前置主義)
ただ離婚裁判にまでなると
弁護士費用もかかる
・時間も労力負担も増大
裁判では生々しい下ネタの口頭弁論が公開の場で行われる
など相当の覚悟も必要になります。

離婚調停は申立人であれば途中でいつでも取り下げできる

離婚調停は申立人であれば途中でいつでも取り下げできる width=

離婚調停を申し立てた後でも調停の申立人(離婚調停を申し立てた側)はいつでも調停の申立てを取り下げる事が出来ます。
離婚調停の申し立てを取り下げる理由は別になにも問われません。
話し合いが進展しないことに嫌気がさした。
体調を壊した。
精神的・肉体的に疲れた。
もはや離婚調停をする目的や情熱がなくなった。
さまざまな理由で取り下げても裁判所でその取り下げを拒むことはありません。

一度取り下げた離婚調停でも再度申し立てはできる

いったん取り下げた離婚調停ですが再度改めて申し立てをすることはできます。
ただ、取り下げ後すぐ(たとえば数日後)に再度の離婚調停申し立てをしても家庭裁判所はそれを不当申立てを判断して申立書を受理しないこともありますから気をつけてください。
再度離婚調停の申し立てをするにはやはり半年~1年程度は間隔をあけてからにすることをお勧めします。

離婚調停で相手が来ない!欠席

離婚調停で相手が来ない!欠席
離婚調停は家庭裁判所が期日や時間・場所を事前に決めて双方に呼び出し状を送ります。
その離婚調停の場に相手が来ない!欠席の場合もあります。
そもそも離婚する考えはないので調停の呼び出しを完全に無視している。
というケースもありますが得てして
仕事上の都合でどうしても行けなくなった
自身の体調が崩した
子供が急に熱を出した
などさまざまな理由があることも。

しかし、離婚調停で相手が来ない?欠席された場合はどうなるのでしょうか?

1回程度の欠席で必ずしも不利になるとは限らない

やはり無断で欠席したり来なかった相手に裁判官や調停委員の心証を害する恐れがあります。
ただ現実的にどうしても欠席せざるおえない状況に陥ることにはある程度は家庭裁判所も理解はしてくれます。

白黒決着をつける裁判とは異なり調停はあくまで「話し合い」に重きをおいています。
やむおえない事情や理由がきちんと伝わっていて「話し合いに応じる姿勢がある」と家庭裁判所が認めてくれて1回程度の欠席ならば必ずしも不利になるとは限らないのです。

ただ事前に離婚調停の欠席の連絡は必要

無断で欠席は「話し合いに応じる姿勢が認められない」と心証が悪くなりかねません。
必ず事前に欠席の連絡を入れましょう。
離婚調停の欠席の連絡は担当の家庭裁判所に電話をして
・調停の事件番号
・氏名
・欠席しなければならない理由
を伝えるだけで大丈夫です。
長々と言い訳をする必要はありません。
簡略な連絡だけで大丈夫です。

まとめ

多くの方が「調停」と「裁判」とをごちゃまぜに捉えています。
離婚調停は「遅々として進まない夫婦同士の話し合い」を驚くほどスピーディーに解決する方法です。
しかもその手続きや費用は驚くほど安価・簡素なことを知っておいてくださいね。

また離婚は夫婦双方の合意が無ければ成立しません。
離婚調停で離婚の話し合いが成立しなければその次に離婚裁判となります。
今の日本の離婚の制度ではいきなり離婚裁判はできません。
まず離婚裁判の前に離婚調停を経なければいけません。(調停前置主義)
今すぐにでも離婚したいあなたには少々まどろっこしい制度かもしれませんね。

離婚が認められる事由

離婚が認められる事由
「ただ別れたい!」では離婚はできません。
法律できちんと離婚事由が定められています。(民法第770条)
配偶者に不貞行為があった
結婚している人がその配偶者以外の人と自由意思により性的関係ももつこと
例)性的行為を伴う浮気、風俗店に通い続ける、など

配偶者が結婚の義務を意図的に怠る(悪意の遺棄)
配偶者が理由もなく同居しなかったり、協力しなかったり、生活の保障をしなかったりすること。
例)生活費を入れない、家出を繰り返す、病気の配偶者を放置、など

配偶者の生死が3年以上不明
失踪や家出などにより配偶者からの連絡がまったくなく、3年以上生死が分からない状態。
例)蒸発、消息不明、生死不明、など

配偶者が思い精神病を患い回復の見込みがない
配偶者が重度の精神病になり、家庭を守る義務をもはや果たせない。
例)総合失調症、認知症、躁うつ病、偏執病、など

その他婚姻を継続しがたい重大な理由がある時
①~④にあてはまらないものの夫婦関係が実際に破たんしている考えられる状態。
例)性格の不一致、性生活の不一致、DV、過度の宗教活動、配偶者の両親親族との不仲、など

逆に言えばこれらの①から⑤の離婚が認められる事由が無ければ相手が離婚に同意しない限り離婚は難しいのです。
ただ問題は⑤その他婚姻を継続しがたい重大な理由がある時なのですがこれがケースバイケースで必ずしも離婚調停や裁判で離婚が認められるとは限らないことも知っておいてくださいね。

相手が離婚に同意しない場合は離婚が認められる客観的証拠資料が必須

相手が離婚に同意しない場合は離婚が認められる客観的証拠資料が必須
私のほうに寄せられる相談でも多いのですが、いくら涙ながらに訴えても相手が離婚に同意しなければなにも離婚話は進展しません。
一方的な「感情」「愛情」「気持ち」だけでは離婚はできないのです。
また離婚では「慰謝料」「財産分与」「子供の親権」など重要な問題もあります。

調停も裁判と同じところは「自分で客観的証拠・資料を用意」して裁判官・調停委員を納得・説得しなければいけないことです。
生半可な資料や証拠では有利な離婚の進め方はできないことを肝に命じておいてください。
離婚調停を申し立てる前には十分その客観的証拠・資料をまず揃えるところから始めなければいけないのです。